インタビュー 〜国際化を目指す中央大学〜

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グローバル化時代に多様な取り組み
−永井中央大学総長・学長に聞く−

白門ヘラルドのDVD化にあたり、中央大学の永井和之総長・学長にインタビューし、中央大学の国際化に向けた取り組みなどを聞いた。インタビューの一問一答は次の通り。(聞き手:飛山 将)



 

▼やる気応援奨学金

−白門ヘラルドは2002年に廃刊となりましたが、半世紀続いた白門ヘラルドを残しておきたいということで、いま新聞をDVDに保存する作業を進めています。まずお聞きしたいのは、中央大学は国際化に向けてどのような取り組みをされていますか。



 

(永井和之総長・学長)学生がグローバル社会の中に出ていき、働き、生きていけるようにするということに尽きます。日本の企業もグローバルな人材枠や留学生枠を設けるようになってきました。そのために例えば、法学部では「やる気応援奨学金」をつくっています。ジュネーブの国際機関で活動してみたいならば必要な準備はすべて自分でやり、大学は航空運賃を補助するといったことをしています。資金はOBからの寄付です。キャンパスでも国際的な教育を身に着けさせるようにしています。法学部ではTOEICの点数によってクラスを編成したりしています。


(インタビューに答える永井和之中央大学総長・学長)

総合政策学部では「チャレンジャーズ・プログラム」を設けています。すべての授業を英語で行うというもので、3分の1の学生がこのプログラムに入っています。これはなかなか厳しいですよ。文学部や理工学部でも計画があります。理工学部大学院では、今、学会発表が英語必須となっている時代なのです。

中央大学への留学生は一時800人から400人に減りましたが、今は600人に増えています。中国人が一番多く、次は韓国人ですが、欧米人は少ないですね。欧米人は今、中国に流れていいます。これも時代のすう勢でしょう。だから中国、韓国、中央大学で共同プログラムをつくって、3カ国の枠内で中央大学にも来てもらおうと思っています。さらに国際寮をつくりました。外国人留学生と日本人を一緒に入居させるのです。1部屋3ベッドのうち、1ベッドは日本人であとは外国人に割り当てて、日常的に国際化を図ろうとしています。



 

▼イモ洗い効果の多摩キャンパス

−多摩移転は成功だったのでしょうか。



 

(永井)中央大学の受験生は約8万人で、明治大学や早稲田大学より約3万人少ないですね。1都3県でみると、約1万人の差があります。これは中央大学の場合、自宅通学が難しいことが原因です。特に女子が少ないですね。男子は入学希望者が4位か5位だが、女子は10位にも入っていないのです。これが移転のデメリットです。メリットはキャンパスの一体感です。一つのキャンパスでぶつかり、切磋琢磨して大人になっていく。言葉は悪いのですが、イモ洗い効果と呼んでいます。他の大学ではありえません。 

−都心への再移転の可能性はあるのでしょうか。



 

(永井)資金や土地を考えると、無理ですね。ただ都心展開はありえるでしょう。

 



−今後の大学づくりの構想は。



 

(永井)18歳で入学する時の入り口は一つでも、卒業までに出口はいろいろあってもいいと考えています。私の将来の夢は一つの学部づくりです。全学部を一つの学部とする柔構造的なものを考えているのです。イタリアの画家ラファエロの作品「アテナイの学堂」のような姿です。一つのキャンパスが溶け合い、融合するということなのですが、なかなか理解は得られないですね。




 



▼ヘラルド復活を是非検討

−中央大学の国際化による取り組みの効果は出ていますか。



 

(永井)最近では外交官に年1人が合格するようになりました。昔は外交官試験の合格者は多かったのですが、一時途絶えていました。それがようやくまた合格者を出せるようになりました。今後、もっと増やしていきたいですね。



 

−われわれは白門ヘラルドのDVD化を契機に部を復活できればと思っています。



 

(永井)中央大学新聞も一時は部員が1人になり、てこ入れして、ようやく3―4人になりました。(白門ヘラルドのような英字新聞の)体験も重要なことですね。DVDがホームページになるということですが、本学には留学生もおり、英語のチェックもしてもらえますよね。(部の復活を)是非、検討してみたいと思います。



 

(2011年7月4日にインタビュー)

※永井和之総長・学長の略歴
東京都出身。1968年、中央大学法学部卒業。69年同学部助手、74年助教授、81年教授。99年から2003年まで法学部長を務め、2005年11月中央大学学部長、同年12月総長。